「失色」/菊尾
交わるのは剥離していく午前の中
円形を保てない僕は
不器用ながらも整えようと伝えようと
這いずりながら溺れていく
盲目の犬が娼婦に縋る
仲間はずれの黒い鳩
欠けたリップスティック
脳内の季節は止まったままで
眼にする現実がすぐに泡になる
少年が燃やしたのは
カビの生えた黒い新聞と古いネガ
まどろむ事も許されない夢の中で
少年は歪んだ大人へと形成された
アルファベットと数字が現実逃避の手段
薄弱な君が僕の手を連れて遊ばせようとする
深い穴に吸い込まれまいと必死になって塞ぐけど
虚しく、欲だけが満たされ感情を失う
形作られていく月があまりにも大きい
誰かが居ても空白だけが埋めていく
眼に捉えられないのなら
それは居ないも同じ事
ここは楼閣
認識されない僕は
透明に等しく
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