トリプルアクセル/
木葉 揺
鍵盤の流れ
書斎の壁
狂った額に優しく
私は受話器を落とす
「悲しみを愛せよ・・・」
無数の音符に巻かれて
加速する刃
氷を突き、宙を舞った
私は目覚める
衝撃は転調に救われ
喜びに溶けこむ
第三楽章が終わった
銀色の涙がパチパチと鳴り
平等に降りそそぐから
私はしばし打たれ続けた―
窓からグレーの光
そっと机に向かいペンを執る
言葉の上にも
銀色の粒が反射していた
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