「終わるまで」/菊尾
 
そのままを見ていくよ
秒毎に移り変わっていく
電車の窓からの景色みたい
刹那的なそのままを
どうか眺めさせてよ

聞き取ないくらいの弱い声
しばらくは話さずにいた
水滴が流れた跡をなぞって
会話が途切れた後は
その指の行き先を追いかけた
思い出したように話し始める癖は
相変わらずで
僕はまた耳を澄ました

あの人は
足跡も自ら持ち去った
汚さぬようにと
空白だけを残していった
君はあの人みたいに話し始める
捉われたまま
過ぎた日々の中で夢を見続ける
巻きすぎたネジは
壊れてもう動かない
オルゴールはもう鳴らないのに

秋が始まる
夜の長さが君へと続かせる

戻る   Point(0)