コルトレーン 二編/ワタナベ
夜の汀に
静かに打ち寄せる旋律が
月を濡らし
とびきり無垢なくらやみ
豊かな潮騒に包まれる
すべての静かなあなたたち
今はただ
波間に映りこんだ月のように
やさしく揺れて
なにも持たずに眠りにつくといい
1/fのゆらぎの夢
ふわりと空の高みへ
純粋なあなたへと還っていく
やさしく揺れて
波間に映りこんだ月のように
夕日まで一筋の道
振り仰げば茜空に
コルトレーンのシルエット
やさしくスウィングするたび
日は揺れながら西の空の向こう側へ落ちて
闇も夕暮れも同時に押し寄せ
ミニチュアの街を
夜の浜辺へ押し流していく
私はそこで一枚の貝殻を見つけた
くすんだそれが瞬くと
潮騒につつまれ
ざざん、と打ち寄せては
すす、とひいていく夜に
砂の城は跡形もなく
ただ砂浜に木の枝で
くっきりと描かれた文字だけが
消えることなく朝を待っている
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