巣箱/
松本 涼
彼方の灯火を目指して
星が時間を登っていく
宿題を忘れた子供のような顔で
君が僕から目を逸らす
様々な哀しみと喜びの選集を
投影しながら窓枠を
低速で横切る薄い雲
ガスレンジの上でシチューの鍋が
カタコトと揺れている
幾億もの細胞へと発信される
瞬間の記憶
創り続ける僕らの日常
意識下の君に手を伸ばす
小さな巣箱の中で
今朝孵ったばかりの雛が
大きく鳴いている
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