エトランゼの行方/パンの愛人
 
田村隆一がいうには、金子光晴の詩の上手さを最初に教えてくれたのは鮎川信夫であったという。
ここでは金子、鮎川のふたりに共通すると思われるある種の感性、
――はじめに種明かしをしてしまえば、ぼくはそれを「エトランゼ」という語であらわすだろう――
そして逆に両者の間にみられる相違点を、ごくかいつまんだ形で素描してみたいと思う。
というわけで、以下はあくまでスケッチにすぎない。

まずは鮎川の「1948年」という詩を引用してみよう。

   ウイスキーのレッテルには
   1886と書いてあった その年から
   ぼくの悩みは始まっている
   いちどは犯罪許可証を懐中にして
 
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