七人の話 その3/hon
 
 厨房で、秀人と仁乃が二人、食後のかたづけをしていた。仁乃は台所で食器を洗い、秀人はキッチンテーブルについている。
「あの子たち、今日は外のノイズが薄いとか言っていたね。ノイズが濃いとか薄いとかが、わかるみたい。私にはノイズの違いなんて、分からない。窓から外を見ても、いつもと同じ暗がりにしか見えない。ねえ、違いがわかる?」
 仁乃は洗い場で皿を洗い、洗った皿をカゴに立てかけていく。
「俺にもわからない」秀人は濡れた皿をカゴから取って、ちょっとずつ回しながら、布で拭き取る。「俺たちには、ノイズは単にノイズでしかないもの。窓の外を見やることすらしない。ムツオとナナコか。あの子らは、ものごころつく
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