空の器 /服部 剛
 
昨晩は夕餉のあとに 
家族みんなでテレビを囲み 
遠くへ嫁いだ姉が送ったビデオを入れて 
5歳の姪が懸命に踊る姿を見ていた 

今朝は早くに目が覚めて 
寝ぼけ眼(まなこ)で水を入れたグラスは 
無数の汗をふきだし 
とてもよい表情をしていた 

昨日まで 
わたしという器に入っていた 
濁った水を流しにすてて 
空(から)にする 

今日から 
汗にまみれて踊り抜き 
泣いて父に泣きついた姪のような 
すみきった水を入れたい 

わたしという空の器に 







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