「紙一重」/菊尾
 
擦り切れて
麻痺した感じが素敵なわけです
脳内の中で躍ることができるバレリーナ
夜通しサメザメと笑える姿を鏡で見ました
世界の美しさに魅了されて
僕は両目を塞ぎます
失くすことなく留めていられるように

イビツなお月様が
僕の足元を照らしてくれているから
ふらりゆらりと歩くのです
理由について悩めたあの頃の余裕は
空白が埋めてしまったから
せめて明け方の空を忘れない為に
こうして夜道を歩いているのです

呼吸のリズムで
爪を切って切って
そんなように
この世に断りを入れていきます
人形のように見えるあなた方は
綺麗なのに触れたくない
壊したく、また、壊れていく僕らのガラス玉
映りこんだ表情は
やっと人間らしいです

ラララ
ラララ
嘆きも叫びも浮かびません
動きを見せる夜空を羨みます
口ずさむことのできるメロディを頼りに
この気持ちが解体されないよう
足元の揺らぎに身を任せながら
僕は素足で歩きます


ぐわり揺れる
綱の上にて

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