花冷え/
渡 ひろこ
ふと 見やると
やわらかくすぼむ
うすい唇たちが
蒼白となり
かすかに震え
ひとひらも零さぬように
おし黙る
萌え出ようと
ツン と屹立した
小枝の先もうなだれる
重たげな憂いが
いつのまにか
花冷えを呼んだのか
乱痴気騒ぎを一掃した
宴(うたげ)のあとの静寂
風が名残を消すように
一陣 吹きぬけていった
(いにしえの地ぞ)
と
はらり と囁く
とう
りゃん
せ
ゆっくり
弧をえがいて
舞い落ちていった
戻る
編
削
Point
(19)