花冷え/渡 ひろこ
 



ふと 見やると
やわらかくすぼむ
うすい唇たちが
蒼白となり
かすかに震え
ひとひらも零さぬように
おし黙る


萌え出ようと
ツン と屹立した
小枝の先もうなだれる
重たげな憂いが
いつのまにか
花冷えを呼んだのか
乱痴気騒ぎを一掃した






宴(うたげ)のあとの静寂






風が名残を消すように
一陣 吹きぬけていった




(いにしえの地ぞ)

はらり  と囁く





とう
       りゃん

  せ





ゆっくり
  弧をえがいて
    舞い落ちていった














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