自転車の唄 /服部 剛
最近運動不足だったので
行きも帰りも
家と駅の間を歩き
めっきり乗らなくなった自転車が
ある冬の日の玄関で
肌寒そうに置かれてた
( 今日は休みだたまには乗るか )
いつぞや誰かのいたずらで
かごを取られて
骨組みだけの自転車は
久しぶりにペダルを踏むと
ぎしりぎしりと鳴りながら
ぼくの疲れた尻をサドルに乗せて
すいすいすいた道をゆく
風をきり
自転車とひとつになったぼくは
懐かしい唄をつぶやく
( うたをわすれたかなりあは )
いつのまに
こころに奏でられる
おるごーる
サドルの下の自転車は
自分を思い出すように
走る喜びみなぎらせ
すいすいすいた道をゆく
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