檻の犬 /服部 剛
 
北風に震える 
枯葉並木の向こうへ 
携帯電話の画面を見ながら 
朝の歩道をのんびり歩く 
ふたりの女子高生を 
追い抜く 

シャッターを開いた 
動物病院の女医が運ぶ 
檻(おり)に入った子犬を乗せて 
走り出したワゴン車が 
女子高生とぼくを 
追い抜く 

大人になったぼくも 
女子高生のふたりも 
いつまでも見えない檻に囲まれた 
子犬のような 
行方も知らずにまっすぐ伸びる 
この道のような 
人生という退屈の延長線上を 
ポケットに入れた手をまさぐりながら 
何処までも歩く 

冷えた路面に舞う 
枯葉の渦の向こうに 
小さく見える 
赤や黄色の信号が 
青になる 
ささやかな瞬間を待ちながら 

すべては一つの方向に 
すいこまれる 







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