シャドウボクサー/服部 剛
小さい頃
目の前に立ちはだかる
でっかい親父と向き合い
パンチの練習をした
額にあてられた
ぶあつい手に
視界を覆われ
打っても打っても届かない
小さい拳
「 ほれほれどうした、もっと打て 」
めくらめっぽう空を切る
届かぬ拳の上のほう
見えない親父の顔が笑ってる
大人になった今となっては
親父の髪もうすくなり
パンチの相手も変わったが
あの頃
目の前に立ちはだかった
親父のぶあつい手を
今も時折思い出す
「 ほれほれどうした、もっと打て 」
明日から幕を開ける一週間
見えない壁に向かって
あの頃の拳を打ち続ける
タイムカードを挿しこみ
音の無いゴングが鳴りひびく
週末の夜まで
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