一粒の太陽 /服部 剛
机の上に置かれた
飲みかけの水がゆれるグラスに
一粒の太陽がひかる
パスタ屋の2階から見下ろす
銀杏並木の道を
まっすぐに人々は
みえないものに押されるように
それぞれの背中が小さくなる
布地のブラインドに
朧(おぼろ)な太陽
先月まで
銀杏並木の塀沿いの
並んだ家にいた友は
今頃パリの一部屋(ひとへや)で
あくびの口を開くだろうか
遠い異国にいる友よ
このパスタ屋の
机の上のグラスにひかる
一粒の太陽は
明日のパリを覆う雲間から顔を出し
君の朧な朝を照らすだろう
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