ミッキーに会いに/とうどうせいら
 
を振れる。
行きたくなったらまたいつか行ける。


全て終わっていくけど何も終わらないことを知っているから。

いつだってミッキーはわたしを見ている。
カーテンの陰から
自動販売機の向こうから
満員列車の乗客になりすまし
食堂の厨房の奥でひっそりとうどんの湯切りをしながら
こちらを伺う。
だってミッキーは芸歴75年のエンターテイナーだ。
ほんとに泣きたい気分の時にだけ現れる。
サプライズタイムを耽々と狙っている。
夢の国は頑張っている大人のための場所。

午前中の光は冷たくて明るかった。
わたしは髪をまとめた。
ミッキーマウスにハグされたわたしは
鏡の中ですこし優しかった。

今日は床磨きから始めることにした。

蛇口をひねる。





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