窓辺/たけ いたけ
 



手を伸ばしながら
肌色の陰影を儚く思って
昨日の出来事や
消えない火傷の跡を想って
逆さづりになったリスや
キスをしてくる犬や
無卵生を守っている卵の殻
なんかを次々に一緒くたにする
そうやって何回も描かれるものたちが
いつか自分に帰ってくるように願いながら
手をしっかりと引き返した

飛行機が飛んでいく先は寂れた国内線専用の飛行場
偶然に窓を開けてその飛行音を聞いていた人たち
右耳だけで聞いていた人
あるいは左耳だけの人
あるいはもう遠くの背後だったのだが家全体が震えて聞かされていた人
その全ての気持ちが少しづつ薄れながらやがて着陸する

鑑別所
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