線の街/あおば
ればならない
無くなったはずの
特急平和号の到着を待っている
1950年代の東京環状線内には
大正時代の焼け残りの
うす茶色の低層住宅の群が
どこまでも続いている
不思議な静かな佇まいも
夜になると
森永製菓のエンジェルたちが輝いて
渋谷五島プラネタリウムにも
新しい星座が来るのを待っていた
敬虔なアメリカ人の青年たちは
理由無き反抗を企てて
ロックンロールの波にかき消され
太平洋上には
価値のあるものは
なにもなくなってしまったようだ
だから
ながいあいだ
格好いい鎖国という名で
経済封鎖された後の
おきゅぱいどじゃぱんの
海の底に隠しておいた
売れ残った
パールカメラを買い求め
行方不明になったままの
君を写しに行こうかと
ちょっとだけ
考えている
過去作
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