本日/松本 涼
 
まるでひとつの季節が終わるように
僕は死んだので
周りの誰もがそのことに
気がつかなかった

僕だって少し前から
予想はしていたものの
実際にははっきりと
自覚している訳ではなかった

本日
暗い路地でじゃれ合う
親子の猫を観察している時にふと
ああやっぱり僕は死んだんだなあと
思っただけだ

そして次の季節が始まるように
僕は既に生まれていたので
多少の違和感と共に
僕は今そろそろと
辺りを見渡している

戻る   Point(6)