「風の中」/菊尾
 
柵の向こう側で綺麗に横たわっていてよ
低速の音
よぎり始めて、永く続いて、
何事もなかったように
始まってもいなかったみたいな

気が狂ったような風の中では
見えるもの全部が動くことを止めてしまう
僕の目も見ることさえ忘れてしまう
影の鳥
目で追える速さで空を横切った

花びらが舞って
蝶々は留まる花を見つけて
何色模様で今を描いていこうか
遠のいてしまえば
ただ、それまでの話

飄々としているのは
人が、怖いから?
自分の気持ちも知らないのだから
誰かの気持ちなんて分かるわけないよ

浮かされたのなら
鼓笛隊のリズムで飛び越えてしまえばいい
ほら、君もあんなに、もう遠い

僕らは、ただの点
点と点の間に線を引こう
線の内側で
声を交わそうよ
すこしの間を空けながら

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