水草/たけ いたけ
夕陽が沈み
水面を揺らぐ水草みたいに
淀んだ空
何かが起こる気がしている
モネの絵を思い出したところに
彼女の目の中
には
何かが渦巻いていた
素晴らしいスピードのミュージック
ライラックって無邪気な言葉を思い出す
壁にかかったトマトの絵
着物を着た女はオブジェになっていた
金の装飾を備えた部屋に
転がるバナナの皮と卵の殻
ドラクロワ
その影にネズミが逃げていく
冷たい風が吹く
そのとき一つの命が終わったんだ
私ってひどく残酷だわ
彼女が独り言を吐く
それに酷く懐かしさを覚えるんだ
電車の奥では薄汚い中年の男が虚空をみながらニヤついている
まるで
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