ウルトラマンの人形 ー江ノ電にてー /服部 剛
江ノ電の窓辺に凭(もた)れ
冷たい緑茶を飲みながら
ぼうっと海を見ていた
突然下から小さい手が伸びてきて
「かんぱ〜い」
若い母の膝元から
無邪気な娘がオレンジジュースの
ペットボトルをまっすぐさしだす
思わずぼくはたじろぎながら
つくり笑顔で
「かんぱ〜い」
ペットボトルを幼い娘と重ねる
鉛色の波間に夕焼は滲み
海沿いの線路が
緩やかに曲りくねるあたり
幼き日のぼくは
母の隣で膝をつき
瞳をひろげて
窓外に煌(きらめ)く海を眺めている
小さい手に持っていた
ウルトラマンの人形が
電車
[次のページ]
戻る 編 削 Point(7)