「 無 」/
服部 剛
昨日のゴミ置き場で
幸せそうに日向ぼっこしていた
白い便器の蓋が
今日は無い
腰を痛めて十日間
介護の仕事を休んでいたら
先月の誕生会で
目尻の皺を下げていた
婆やの姿が
すでに亡い
便器の蓋は
焼却炉の炎に燃え
婆やの遺体は
火葬場の炎に燃え
煙突から
ひろがる空へ吸いこまれる
煙のひとすじ
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