「止まった世界で」/菊尾
いつもみたいに笑った
滲む感情を奥へ押し戻すために
いつもより多く笑った
一冊分にも及ぶ会話の中
話したいことは声に出来ないままでいる
隙間の無い会話は
途切れた後の沈黙が怖いから
聞きたいことは聞けないままでいる
触れ合っても掴めなくて
近すぎる存在だからこれ以上を望めない
僕らの間にある空白は埋まらずに
影のように孤独が付きまとっているよ
溢れる想いをどこへ沈めればいいのだろう
それでも出逢わなければなんて思えないよ
器用にこなせない当てのない恋
うつむいた先の水溜りに幾つか星が映りこんでいた
遠い場所であの人もこんな
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