白い夏/前田ふむふむ
 
優しい国のふもとでは、
テレビのなかで、パソコンのなかで、
夥しいテントが並べられている。
積み木のような高層ビルの森の透き間を埋めて、
資本家の設計した本土総力戦を生きた、
こころに赤い傷口をもつ難民が、零れている。
300万の静脈管の群。
傷口は、小さな声のため息から、
石のような細胞まで、冷房に浸り、
爽やかに振舞うイデオロギーで着飾った、
白い肖像たちのいる街を、
うつむきながら列をつくり、
眼差しは、語れない言葉を胸腺のおくに、
熔かして歩いた。
ハローワークは、検閲に針の穴も通さず、
変色して朽ち果てている、
警視庁特別警察部の旗がふられて、飴と鞭がつづ
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