月をついばむ魚/渡 ひろこ
森林の中
ひっそり潜む
小さな月
あさい眠りの
はざ間を泳ぐ
黒い魚影が
ゆらり と
身体をしならせ
ついばんでいく
冷たい魚の接吻に
吸いとられていく
一オクターブ上の神経
ぬぺりと
むきだされた
月の肌は
弱々しくあえぎ
木々の間から
dim(デミニッシュ)の不協和音を叫ぶ
聞こえぬふりをして
走っていく足元に
からみつく魚影
痩せ我慢の
変ロ長調で
歌えども
魚は
旋律さえも
せせら笑って啜り
病んだ月が
ますます
満ちて
巣食っていく
私の頭の
森林に
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