カツのころも /服部 剛
 
棚の上に置かれた 
小さい額の中は 
去年の祖父の墓参り   

過ぎた日の 
こころの咎(とが)を忘れたように 
墓前で桜吹雪につつまれ 
にっこり並ぶ 
母と祖母 

雲ひとつない
秋の夜空に昇る 
まあるい月を見に 
散歩に出かけて 
帰ってくると 

今年米寿の姑は 
「今夜のおかずは美味しいよ」 
当然そうに呟いた 

食卓を照らす 
らんぷの下 
腰を丸めた姑と 
頬のたれた初老の嫁が 
屈みあい 
串カツにパン粉を
まぶしている 




戻る   Point(8)