串かつの夜 /服部 剛
 
「親父はがんもどきだね」 
「お前は豆だよ」 

「母ちゃんはさといもだね」
「いいやじゃがいもだ」 

「婆ちゃんはもはや梅干」 
「それはそうだな」 

ぱりっとした衣に
じゅわっと蕩(とろ)ける玉葱と肉 
一本の串につらぬかれ 
よっつ並んだ具のような 
よにん家族 
 
串カツを盛る大皿囲む 
らんぷの明かりの食卓で 
今宵夕餉の会話は弾む 

ソースもなぜか喜んだのか 
母ちゃんの持つ容器から 
どばっとあふれ 
食卓の上は 


   くろい海 


じゃがいもは立ち尽くし 
がんもどきは立ち上がり 
梅干はくしゃくしゃのティッシュを握りしめ 
豆は呑気(のんき)にみんなをながめ 
じゅわっと蕩ける串カツを 
幸せそうに 
小さい口に 
ほおばった 




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