/猫之面
たとえば
誰もいない白い壁に向かって
笑顔で意味のない言葉を発する老婆を
異質なものであるかのように見る目
ないものとして通り過ぎる足
そういったものを映したお前は俺に話しかける
(たぶんあのおばあさん
(あたしたちが見えないものも見えるんだわ
たとえば
何の病気なのか
内側に立てた爪先でしか立てず
へびのような歩き方をする男を
かわいそうだと目をそらしながらささやく声
それを聞いたお前は俺にそっと話しかける
(たぶんあのおとこのひと
(あたしたちが歩けない世界を歩くんだわ
たとえば
ゴスロリ魔女っ子ファッションで
堂々と電車に乗り込んできた少女を
馬鹿にしたような女子高生のひそひそ話
サラリーマンが向けた携帯カメラのシャッター音
そういうのを知ってお前は俺の耳元で話しかける
(たぶんあのおんなのこ
(あたしたちが知らない魔法を知ってるんだわ
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