暖かい黒水晶/蒸発王
 
きます
黒い眠りの粒子が
土の香りと混じると
ぐっと強くなった

眠りの匂いが

とりまいて

夫は



最初で最後の眠りに落ちる

刹那



私を見て
微笑いました





流れ出た黒水晶は
墨汁のように私たちの体を染め上げて


香り立つ秋と涙の匂いに

私は
ただ溜息をついて


この黒水晶が
ゆったりと温度を失うまで

抱きしめたままでいたのです




『暖かい黒水晶』

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