風のなき声 /服部 剛
日中というものは
人前で働く時に
何処か怒った風貌でいるのです
そうでもせぬと
いつも背後に立っている
怠けた腕をなよなよ伸ばす
自分の影の手招きに
ずるずる
引きずりこまれてゆきそうです
ほんとうに
くったりとした自分になるのは
仮面を外した
たった独りの夜がいい
ほんとうは
鉛の重さになった頭を
のせてくれる
誰かの細い肩を夢に見て
何処にも届かぬ独り言を呟きながら
今日も夜道を歩いています
背後の暗闇に
白い旋毛(つむじ)を描いて
舞う
風音を聞きながら
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