森のひかり デッサン/前田ふむふむ
 
野いちごを食べて、細いけものみちをわけいった。
蔦が絡まる門が、行き止まりを告げているが、
白い壁に覆われた一対の塔をもつ建物は、
わたしを甘い蜜のように誘惑した。
とり憑かれたように、門をくぐろうとして、
小さな胸を突き上げた夕暮。
からだの中心を走る、押し寄せる波を、
泡のひとつひとつまで、話せるような気がした。

建物のなかは吹き抜けのホールが、
終わりかけているひかりを享けいれて、
紙幣の束を握り、酒を交わしながら、
円を作ろうとする男たち――。
その線分に、鋏を入れて分配しあう女たち――。
会話はいくえにも混ざり壁にすいこまれて、
白く染まっていった。

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