指の記憶/
松本 涼
指の形を覚えている
緩やかな節への流れと
その静かな温度を
ある日私の地平の向こうへと
吸い込まれていった
橙の夕暮れも透明なカラスも
かつてはその指を知っていた
今は置き去りにされた
記憶たちが印のように
渇いた土の上に点々と落ちている
私はそれらを拾い集めながら
同じ地平の向こうへと歩いている
私はもうじき死ぬのだろう
そして生まれゆく私の姿を
あなたが見つけることがなくても
それでいい
その時あなたの指が
幸福に触れているなら
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