うつろな大工 /服部 剛
 
建築中で骨組みの
家の前で 
彼はぼうっと立っています 

皆それぞれ忙しそうに 
柱の上や足元で 
とんとん釘を打ってたり
しゅっしゅとカンナで削ったり 
重いバケツを運んだり 

ぼうっと立っている彼は 
両目は点で 
まあるく口を開けたまま 
晴れた空の彼方から 
建築中のこの家の
骨組みの間を吹き抜ける 
風の唄を聞いています 




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