風の顔 /服部 剛
 
わたしは怠け者であるゆえに 
連休前に風邪をひき 
おまけの休みの時間のなかで 
らんぷ一つの寝台によこたわり 
両手に持った本を開いて 
在りし日の 
詩人の哀しみを読む 


 明日を迎える前に 
 病で世を去る妹のため 
 涙を溜(た)めた詩人の兄が 
 両手ですくい持ってきた 
 一盛りの雪をみせ 
 ( 逝かないでくれ )
 と妹の名を呼んでいる 

 ( そのひとしずくは 
 ( 兄の指のすき間から 
 ( やつれた白い頬に落ち 
 ( 涙となって枕を濡らす 


本を閉じると 
季節外れの秋の暑さに 
今も働く扇風機は首を振り 
風邪に怠けてよこたわる 
わたしの腹の上を 
( 風の顔 )
が何かを知らせるように 
通り過ぎた 




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