享楽のままに・・・ 〜遊園驚夢/九鬼ゑ女
触れるほど焔立つ愉悦に
わたしはしたたかに酔いしれる /ほむらたつ
あなたの脣が、舌が、滑らかに今を這う /くちびる
ああ、と
愉悦を漏らすそばから零れる愛しさ
あなたはその吐息の上澄みを指先で掬っては /うわずみ
わたしを焦らすように
紅い色を転がしながら笑いふざける
狂おしさに 思わずあなたの背に爪を立てるわたし
絶え間なく押し寄せる 激情の波
溺れまいと足掻くほどに
現実は全てを一瞬にして否む /いなむ
いまだけはわたしのあなた
そう云い聞かせて
尽きぬ享楽に身を任せ
ふたりは 幻の桃源郷を彷徨する
蕩けた肌が 白日夢から覚める僅かの間
虚空に羽を広げたその愛は
夢幻に遊ぶ一対の妖蛾
一瞬だけの交尾に為に躰中の銀粉を
辺りに撒き散らす
欲望は果つることなく
抱えきれないおもいを番えたまま /つがえた
わたしはあなたの愛を
花芯に…封じ込める
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