三つ編みの手/服部 剛
 
昨日は忙しい時間に 
トイレに座らせたお婆ちゃんの 
下ろしきれなかったパンツが 
お尻と便座に挟まって 
無理に脱がせると 

  びりり 

両手で持ったパンツには 
小銭の穴が破れて開いた 

仕事を終えた 
明かり一つの部屋にひとり残り 
渋々と始末書を綴る
「今後はていねいに脱がせます」 

今朝は早番だったので 
いつもより早い電車に乗ると
向かいの席にはセーラー服の少女が 
「今日は日直」と書いた白い手で 
黒髪をていねいに編んでいた 

少女は 
今日という日の日直を 
ていねいに編んでゆくだろう 

大人のふりをして 
少女をみつめる僕の手は 
昨日始末書を書く時に 
忘れかけていた
「ていねい」という字を
思い出そうと書いた 
出来損ないの漢字が 
すでに薄くなっていた 




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