香/フクロネヅミ
 
 かえってしまった

温めることは出来ないと思う
キスも
もたれかかることも

ただ、匂いだけは忘れないし
変わらずにあるのだと思う





側にいること、
今夜が一番難しいんだと
そう感じている

黙っていれば時間は過ぎてくれるけど
夜が僕の
うなじをしっかり掴んで

声を出すな
そういっている

静かに
それぞれがどこかを痛めながら
音は情に混じり合っていくのだけれど



 大事なことはなんだろうか
 お別れを言うことだろうか


そっと頬を撫でることも
必要ないのだろう


 在って 
 無いもの 


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