親戚の欠片/あおば
 

挨拶も抜きに
満員電車に紛れ込み
山の手線をグルグルと一巡り
もう、
それで気持ちが吹っ切れたのではないのですかと
別れた人たちが下手から囁くと
座敷牢のような楽屋の中で
読経の稽古をしている
いくつになったら
独り立ちできるのか分からないが
下積みのままで
名前も分からないままに
幕が下りて
上演回数だけがカウントされ
せっかくのお祝いなのに
仲間はずれにされたように
今日も顔を見せられない


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