白鳥座/まどろむ海月
 
{引用=



 明け方の空に
 白鳥座は見えないのですが

  九月なら9時ごろ
  天頂に見えます




あるとき あの人は
白鳥に呑まれた魚だった
その十字架にぶらさがったときも
彼を支配したのは
怒りでも絶望でもなかった

その秘蹟の根底にあったのは
底知れぬ叡智でも
山を動かすような力でも
火に身を投じるような
献身や勇気でさえなかった



右の頬を打たれたら
左の頬を差し出せと
汝の敵を愛せと
言い切る宗教が

その愛の神の名において
流血を繰り返し
一つの民族を抹殺するほどの
虐殺さえ支えてしまうとき
その狂
[次のページ]
戻る   Point(3)