夜少し前/松本 涼
 
慌ただしい今日の影が
私鉄電車の線路の上で
蒸発していく

なぜこんなにも美しく
空は色の層を創るのだろう

混ざり合わない
それぞれの憧憬を
ほんのひと時
寄り添わせるように

見つめられる遠さ
映し出せる瞬間

聞き取れる音
伝えられる振動

限られた世界の端も
僕はまだ知らない

そして限りがないことも

ゆっくりと熱した
バターのように
また空に
夜が溶けていく

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