夜空のバス /服部 剛
 
不器用な自分という役を 
脱ぎ棄てたくなった夜 
無人のバス停のベンチに 
重い腰を下ろし 
虚ろな瞳を見上げると 

( お気軽に ) 

壊れた電光看板の 
止まったままの赤文字が 
点滅していた 

やがて遠くの信号は青になり 
疲れた人をまばらに乗せた 
終電バスがやって来た 

後部座席に身を沈め 
眠ってしまった夢の中 
運転手には顔が無く 
帽子の下の黒影に 
瞳が2つ光っていた 

地上の道を離陸して 
道無き夜空を走るバスは 
終点の「 遥かな国 」を目指し 
疲れきった人々を待つ 
家々の暖炉が灯る
夜空の彼方へ 
走っていった 




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