夕暮れの光景の彼方から/前田ふむふむ
 
二十歳の黒髪のような、
ブルックリン橋から、曙橋を繋ぐ空が、
未踏の朝焼けを浴びてから、
青く剥落して、雨は降ることを拒絶した。
とりどりの青さを、さらに青く波打って、
空は、傘を持たずに、
わたしの携帯電話のなかで、
高さのない生涯を息づいている。

あすの空模様が気になり、
コンパクトな世界史のドアを開けると、
天気図の停滞前線が、遠巻きに眺める、
ゆるやかな等圧線の空が、残響を靡かせて、
夏の追認を吐きつづけている。

水晶のような葬列を横切った、真率な声が、
静かな未明にはじまり、
やがて、子供のように草のなかに
朽ち果てていった、
線の途切れた時刻を
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