鍵っ子の行く道/なかがわひろか
 


日記を読むのにも飽きたら
そっと鍵を閉めて、家を出て
また鍵っ子は歩き出した
僕はそっと後をつける

大分歩いて
鍵っ子はやっとこの道が
自分が帰る方向ではないことに気がついた

鍵っ子は途方に暮れたようだったが
しばらくじっとして
そして決心を決めたように
近くにある家の中へ入った

鍵っ子はその家を今後のすみかに決定したようだった

その家は

僕の家だ

僕の家にいた家族は
鍵っ子を歓迎していた

鍵っ子は僕の家の子になった

僕は帰るところを失った

僕には

鍵はない

(「鍵っ子の行く道」)
戻る   Point(0)