夜/ゆるこ
黴臭いなにかに誘われて
踊り出た夕闇、上弦の月
静かに静かに
子守唄を唄う乳母の横を
ちいさな孤独が通りすぎた
(それは駆け足で
(夏のにおいがした
てらてらと蛍光灯に映える唇は
たくさんの嘘を耐え間無く放っていた
ミルク色のそらはそれを
ちゃんと飲み込んで雲にした
油たちは水面に浮かんで
束の間のゆめを見た
はっきりとした感覚は
産まれたばかりの赤子の瞳だった
なんて神聖なのだろう
こんな微量の毒でさえ
染みとなり体を蝕む
なんて神聖な個体だろう
蛆ばかりを、噛んでいる
原色フィルムの日常は
羊飼いとは離れていて
その間を繋ぎ止める
優しい揺り篭が
ぼろりと、笑った
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