Image/瀬田行生
 
列車のベルが鳴る


どうして

どうして

僕らは旅に出て行くんだろう

小さなリュックをさげた女の子が
泣きながら
走って列車に飛び乗った

大きな声で
彼女を呼ぶ声がする

それは男の子だろうか?

その名前は難しい名前じゃない
どこにでもある名前・・・

偶然の出会いは

常に


僕の乗ろうとしている電車は
彼女にとっては
これから生きていく上で
忘れられない思い出になるだろう

列車は今日も色々な人を乗せていく

旅人の僕はこの列車に乗ることは二度とないだろう

同じ日に同じ太陽の角度で
同じ目的地で
あの泣いている女の子がいて

窓際には
小さな白いハンカチが
レールの上に 静かに落ちた
過ぎた列車の痕に
戻る   Point(8)