八月、愛するものにもどってはならない/んなこたーない
置きなく老衰してゆけばいいのである。
「I grow old… I grow old…」
*
小学生のときに、教師から「おまえ、その安全ピン危険だぞ」と言われたことが忘れられない。
何かを記憶するにも、脳みそには許容量があるだろうから、
そう考えると、ずいぶんとつまらない使い方をしているものである。
そんな事よりも、もっと忘れていはいけないことがあったのではなかったか?
しかし、困ったことに、何を記憶するかの選択に意志の力は作用しない。
もしも自分の好きなように何を覚えて何を忘れるか選別可能であったら、それは素敵なことだろう。
この人生で、最低三回は「魔の山」を読んだ
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