ZUZUさん『鳥人間コンテスト』を読む/楢山孝介
 
かけていたわけではない。大記録の達成も、恒例の悲喜劇も、放送前に既に起こってしまっているのだ。
 そして詩は終わる。


 鳥人間にどうして
 コンテストなんてひつようだろう
 飛べるひとは飛ぶ
 ただそれだけのことだ
 そしてH君は飛んだのだ
 だれも知らなくてもぼくだけは知っているのだ

 感傷的文章に終始した僕の文章もここで終わる。「おれだよ、おれ、飛んでるだろ」という電話をかけてくる知り合いは僕にはいない。
 Hが乗っていると言い張った飛行機はどこまで飛んだのだろう。「落ちてるよ、今おれ落ちてる、着水した。水だ、水が入ってきたよ。じゃあ切るよ。落ちちゃった
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