ZUZUさん『鳥人間コンテスト』を読む/楢山孝介
かけていたわけではない。大記録の達成も、恒例の悲喜劇も、放送前に既に起こってしまっているのだ。
そして詩は終わる。
鳥人間にどうして
コンテストなんてひつようだろう
飛べるひとは飛ぶ
ただそれだけのことだ
そしてH君は飛んだのだ
だれも知らなくてもぼくだけは知っているのだ
感傷的文章に終始した僕の文章もここで終わる。「おれだよ、おれ、飛んでるだろ」という電話をかけてくる知り合いは僕にはいない。
Hが乗っていると言い張った飛行機はどこまで飛んだのだろう。「落ちてるよ、今おれ落ちてる、着水した。水だ、水が入ってきたよ。じゃあ切るよ。落ちちゃった
[次のページ]
戻る 編 削 Point(8)