旅/なかがわひろか
女と旅に出た
列車に乗って
読み方の分からない駅で降りた
駅員のいる改札を
通り抜けるときに
よい旅をと
駅員に声をかけられた
ありがとうと言い返したが
もう駅員は次の人の切符を切っていて
僕たちにはとても入り込めないような
日常を繰り返していた
女は喉が渇いたと言った
僕は飲み物を自動販売機で買った
女はおいしそうに飲み干したが
本当は別の飲み物の方がよかった様でもあった
旅館に着いた
仲居に挨拶をして
部屋に案内された
見晴らしのいい部屋だった
僕たちは早速温泉に入って
浴衣に着替えて
おい
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