透明/月見里司
九月がきていて
地面に
板塀に
植木鉢にびっしりと張り付いた
染み付いた七月が離れていかないことに
ひどくひどく怯えていた
屍の一つになっていることを
予期しないだろうか
起きるはずの時刻に着替えが済み
雨はやんで
ふらふらと立ち昇る逃げ水が
残暑厳しい町を蜃気楼のように
変えてしまうことに
僅かだけの時間がついやされた
庭の板塀が綻んでいることをおぼえている
公道を走る二輪車の足をとり
咲き満ちる
ユラユラとゆがむまちと夏の花で埋め尽くされた庭
わたしたちはぜんぶそろってきれいにとうめいな屍になってしまった
から見える隣町には
もう九月がきていて
//2007年8月31日
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