ひぐらし/モーヌ。
ぼくの 住む 土地で
自然に ひぐらしの 声を 聞いたのは
10年も むかしに なる
それは かぼそく いっぴきの 系譜が
つづいて 啼いて いたのだ けれど
広かった 空き地に マンションが 建って
かれらは まったく 滅びて しまった
ぼくが 最後に ひぐらしの 声を 聞いたのは
2年前に なって しまう
野川公園の サンクチュアリ 沿いを 散歩して
美麗な 声の 大群は
やはり 夏の 夕べの 哀感を
ふかみどりを ふるわせ ながら 澄み 渡った
けれども もはや 聖域に しか
それ
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